【寄付月間2020特別レポートvol.13|寄付を通じて、「対立」から「融合」できる社会になるように #寄付月間】

皆さんこんにちは!インターン生のかなりんとはるのんです。

今日は、日頃からユーザーとして、またプロジェクトオーナーとしてactcoinを利用してくださっている齋藤さんの寄付経験を、皆さんにお届けしていきます。

<プロフィール>齋藤 弘道(さいとう・ひろみち)
みずほ信託銀行にて遺言信託業務に従事し、営業部店からの特殊案件やトラブルに対応。遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、弁護士・税理士らとともに勉強会(後の全国レガシーギフト協会)を立ち上げ。2014年に野村信託銀行にて遺言信託業務を立ち上げた後、2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。

actcoinを始めたきっかけはなんですか?

 私は遺贈寄付を普及する団体「全国レガシーギフト協会」の理事をしているのですが、FRJ2019にブースを出店した時に、すぐ近くにactcoinのブースを見かけ「何だろう?」と思って声を掛けたのが最初です。actcoinのご説明を受けて直ぐに「ブロックチェーンによる社会貢献の見える化」に心惹かれました。

「全国レガシーギフト協会」設立の背景

 私はみずほ信託銀行の遺言信託業務に従事していました。遺言のご相談の際に「遺贈寄付」を希望する案件も数多く寄せられていましたが、相続人以外に財産を配分する遺贈寄付には、特有の法律や税金などに関する知識が必要で、信託銀行では対応が難しく、顧客の意思を実現できないケースが多くありました。

 そんな時、たまたま参加した内閣府のシンポジウムで、日本ファンドレイジング協会の鵜尾さんが遺贈寄付に関するお話をされていたのをきっかけに、弁護士や税理士などと勉強会を行い、そこで得られた知見を研修で伝え、遺贈寄付ハンドブックの執筆などを経て、協会の設立に至りました。

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遺贈寄付について

 遺贈とは、遺言によって、財産の全部または一部を法定相続人または法定相続人以外の人(自然人または法人)に無償で譲渡(贈与)することをいいます。遺贈寄付は、自分の遺産を団体に託すことになり、数十年後を見据えた寄付になるため、長期的に信頼できる団体に寄付することが重要になります。

 しかし、応援したいテーマに取り組む団体が小規模な場合には、コミュニティ財団などの中間支援組織に遺贈し、助成プログラムの中で支援することもできます。遺言書の付言事項に「応援したい寄付先の分野」などを記載することにより、自身の希望を叶える遺贈寄付を託すことができるのです。また、中間支援組織は、その時々の時代に合った、適切な団体・活動に助成することが可能なため、自分の遺産をより効果的に社会に還元できるメリットもあります。

齋藤さんが寄付先を選ぶときの決め手はありますか?

 仕事柄、遺贈寄付の寄付先選びのご相談を受けることが多いので、団体の持続可能性に注目しています。特に団体のガバナンスは気になります。非営利組織評価センターのグッドガバナンス認証も大変参考になります。寄付の対象が団体単位ではなく、プロジェクト単位の場合は、寄付の普及に資する活動や調査研究を特に応援しています。

思い出の(印象に残っている)寄付はありますか?

 最近は「遺贈寄付ウィーク」への協賛金や「寄付月間ロゴ入りマスク」などの寄付つき商品に支援することも増え、純粋な寄付との境界が無くなりつつあるように感じています。そのギフト付き寄付の中でも「寄付白書2021」には特に期待しています。寄付白書は2011年に創刊され、日本の寄付データを網羅した書籍です。

 遺贈寄付には2014年から携わっているので、同年に2011年から2013年までの3冊も含めて一気に購入をしました。初めてこの寄付白書を手に取ったとき、自分が遺贈寄付の仕事を始めるきっかけとなったシンポジウムで使われたデータが載っていました。寄付に関する様々な調査がなされていて、それがこうしてデータとしてまとめられている…ソーシャルセクターの方々にとってこの本は本当に価値があるものだと改めて実感しました。

 私も寄付の説明をする上で何度引用したか分からないほど、不可欠な一冊です。現在、発行に向けてクラウドファンディングが実施されていますが、私もプロジェクトが始まった初日に寄付をしました。前回の「寄付白書2017」から4年経過しましたが、1年後の発行を今から待ち焦がれています。https://readyfor.jp/projects/GJ2021

寄付を通してどんな社会になって欲しいですか?

 寄付を通じて「自分と他者」「健常者と障害者」「若者と高齢者」「自国と他国」などが対立するのではなく、うまく融合できる知恵を多くの人々が持てるような社会になれば良いと思います。ここでいう融合とは、隔たりが全く無くなる、ということではありません。むしろ、違いを認め他者の存在を理解しよう・尊重しようとする姿勢のことを指します。

 「寄付」というアクションを通して、誰かが感じている問題や、自分の当たり前が当たり前ではないということにまず気づくことができます。そして、人を思いやり、様々な人を取り巻く状況に想いを馳せるきっかけになるのではないのでしょうか。

 私の場合は、寄付するとき、なぜ寄付するのかを考えます。「自分と縁があるから?」と理由を考えると「縁とはなんだろう」と思うように、どんどん自分の心に問いかけてみるのです。そうすると、自分に近いものとそれ以外の線引きが徐々に曖昧になってきて、最後には線を引く意味がなくなり、分け隔てるものがないような感覚になるときがあります。社会はとても広いので、自分自身の縁や繋がりだけではなく、もっと視野を広げたり着眼点を変えてみると、新たな活動や人など、いろんな出会いや発見があります。

 ご自身の関心のある分野から寄付に挑戦してみるのもよいと思います。一方で、あえて「なぜここに寄付をするのか?」など自分自身に問いかけてみたり、違った視点から社会を捉えることで、より多くの社会課題への関心が高まる効果が生まれます。まず日常にある様々な「違い」を知り、理解しようとし、相互に尊重をできる社会になったらいいなと思います。

最後に、寄付に対する苦手意識のありそうな方にメッセージをお願いします!

 私は、若い世代の人達が公共の場で人に親切にしたり、社会貢献活動に積極的に参加するのを見て感心することがよくあります。寄付というお金が発生する行動に関しては若い人は難しいかもしれませんが、日々の生活の中で社会貢献意識の高さを感じます。社会が成熟し、品行方正を求める昔の道徳教育から、多様な考えを尊重する教育へと変化したこともその一因なのでしょう。

 私が学生だった頃は、自分のことしか考えていませんでした。遺贈寄付に関わり始めた当初も、社会貢献への関心というよりは、「顧客の希望に応える」というビジネス的な思考でした。

 寄付に抵抗を感じる方は、金銭でない寄付をしてみてはいかがでしょうか。ボランティアでも良いですし、自分の得意分野で活動することもできます。ちょっと手を伸ばせば、活動の機会はたくさんあります。自分に合った方法で、少しだけチャレンジしてみると面白いと思います。


◯編集後記

 齋藤さま、お忙しいところ貴重なお話を聴かせていただきありがとうございました!「寄付」というアクションを通じて、「隔たりが融合できる知恵を多くの人々が持てる社会を」という齋藤さんのお言葉がとても心に響きました。違いを認め、お互いに尊重しようとすること、他者を思いやる気持ち、寄付というアクションがそのきっかけになると私も思います。

<interviewer>原田 佳奈静岡県出身、大学4年。actcoinで学生インターンをしながら、下部組織のactcoin for youthで組織マネジメントを担当。actcoinが見据える、「社会貢献活動が世に浸透する」「社会を思う愛と優しさ・勇気を可視化する」のコンセプトに惹かれ、ジョインを決意。
<writer> 一森 春乃 <profile> 兵庫県在住。関西学院大学 国際学部 2学年。actcoinforyouthでメディア発信、ソーシャルウィークエンド(若者向けオンラインイベント)開催を担当。10月からactcoin本部での学生インターンを開始。自身の社会的関心に合ったキャリアを形成できる社会を目指し自らも奮闘中。

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